はめあい選択の基礎/寸法公差及びはめあい
はめあい公差とは「軸と穴(または凹凸)のスキマ量」を示したもの
軸を穴に通す目的は、主に以下の2つがあります。1つは軸が抜けないように、穴にがっちりと固定する事。2つ目は軸が摺動できるように、穴と軸に隙間を確保する事です。
これらを区別するのが“はめあい公差“です。このはめあい公差を図面で適切に指示することで、それぞれの目的に合った軸と穴が出来上がります。
はめあい公差表
H6 | H7 | H8 | H9 | 適用部分 | 機能上の分類 | 適用例 | ||||
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部品を相対的に動かし得る | すき間ばめ | 緩合 | c9 | 特に大きいすき間があってもよいか、又はすき間が必要な動く部分。組立てを容易にするためにすき間を大きくしてよい部分。高温時にも適当なすき間を必要とする部分。 |
機能上大きいすき間が必要な部分。 (膨張する。位置誤差が大きい。) (はめあい長さが長い。) コストを低下させたい。 (製作コスト) (保守コスト) |
ピストンリングとリング溝 ゆるい止めピンのはめあい |
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軽転合 | d9 | d9 | 大きいすき間があってもよいか、あるいはすき間が必要な部分。 |
クランクウエブとピン軸受 (側面) 排気弁弁箱とはね受けしゅう動部 ピストンリングとリング溝 |
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e7 | e8 | e9 | やや大きなすき間があってもよいか、あるいはすき間が必要な動く部分。やや大きなすき間で、潤滑のよい軸受部。高温・高速・高負荷の軸受部 (高度の強制潤滑)。 |
一般の回転又はしゅう動する部分。 (潤滑のよいことが要求される) 普通のはめあい部分。 (分解することが多い) |
排気弁弁座のはめあい クランク軸用主軸受 一般しゅう動部 |
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転合 | f6 | f7 | f7 f8 |
適当なすき間があって運動のできるはめあい(上質のはめあい)。グリース・油潤滑の一般常温軸受部。 |
冷却式排気弁弁箱挿入部 一般的な軸とブシュ リンク装置レバーとブシュ |
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精転合 | g5 | g6 | 軽荷重の精密機器の連続回転部分。すき間の小さい運動のできるはめあい (スピコット、位置ぎめ)。精密なしゅう動部分。 | ほとんどガタのない精密な運動が要求される部分。 |
リンク装置ピンとレバー キーとキー溝 精密な制御弁棒 |
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部品を相対的に動かし得ない | 中間ばめ | 滑合 | h5 | h6 | h7 h8 |
h9 | 潤滑剤を使用すれば手で動かせるはめあい (上質の位置ぎめ)。特に精密なしゅう動部分。重要でない静止部分。 | 部品を損傷しないで分解・組立てできる。 | はめあいの結合力だけでは、力を伝達することができない。 |
リムとボスのはめあい 精密な歯車装置の歯車のはめあい |
押込 | h5 h6 |
js6 | わずかなしめしろがあってもよい取付部分。使用中互いに動かないようにする高精度の位置ぎめ。木・鉛ハンマで組立・分解のできる程度のはめあい。 |
継手フランジ間のはめあい ガバナウエイとピン 歯車リムとボスのはめあい |
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打込 | js5 | k6 | 組立・分解に鉄ハンマ・ハンドプレスを使用する程度のはめあい(部品相互間の回軸防止にはキーなどが必要)。高精度の位置ぎめ。 |
歯車ポンプ軸とケーシングとの固定 リーマボルト |
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k5 | m6 | 組立・分解については上に同じ。少しのすき間も許されない高精密な位置ぎめ。 |
リーマボルト 油圧機器ピストンと軸の固定 継手フランジと軸とのはめあい |
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軽圧入 | m5 | n6 | 組立・分解に相当な力を要するはめあい。高精度の固定取付 (大トルクの伝動にはキーなどが必要)。 | 小さい力ならはめあいの結合力で伝達できる。 |
たわみ軸継手と歯車(受動側) 高精度はめ込み 吸入弁、弁案内挿入 |
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しまりばめ | 圧入 | n5 n6 |
p6 | 組立・分解に大きな力を要するはめあい(大トルクの伝動にはキーなどが必要)。ただし、非鉄部品どうしの場合には圧入力は軽圧入程度となる。鉄と鉄、青銅と銅との標準的圧入固定。 | 部品を損傷しないで分解することは困難。 |
吸入弁、弁案内挿入 歯車と軸との固定 (小トルク) たわみ継手軸と歯車 (駆動側) |
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p5 | r6 | 組立・分解については上に同じ。大寸法の部品では焼ばめ、冷しばめ、強圧入となる。 | 継手と軸 | |||||||
強圧入 ・ 焼ばめ ・ 冷しばめ |
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r5 |
s6 t6 u6 x6 |
相互にしっかりと固定され、組立には焼ばめ、冷しばめ、強圧入を必要とし分解することのない永久的組立となる。軽合金の場合には圧入程度となる。 |
はめあいの結合力で相当な力を伝達することができる。 |
軸受ブシュのはめ込み固定 | ||||||
吸入弁、弁座挿入 継手フランジと軸固定 (大トルク) |
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駆動歯車リムとボスとの固定 軸受ブシュはめ込固定 |
常用する穴基準はめあい
基準穴 | 軸の公差域クラス | ||||||||||||||||
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すきまばめ | 中間ばめ | しまりばめ | |||||||||||||||
H6 | g5 | h5 | js5 | k5 | m5 | ||||||||||||
f6 | g6 | h6 | js6 | k6 | m6 | n6* | p6* | ||||||||||
H7 | f6 | g6 | h6 | js6 | k6 | m6 | n6 | p6* | r6* | s6 | t6 | u6 | x6 | ||||
e7 | f7 | h7 | js7 | ||||||||||||||
H8 | f7 | h7 | |||||||||||||||
e8 | f8 | h8 | |||||||||||||||
d9 | e9 | ||||||||||||||||
H9 | d8 | e8 | h8 | ||||||||||||||
c9 | d9 | e9 | h9 | ||||||||||||||
H10 | b9 | c9 | d9 |
[注]*これらのはめあいは、寸法の区分によっては例外を生じる。
常用する穴基準はめあいにおける公差域の相互関係
常用する軸基準はめあい
基準軸 | 穴の公差域クラス | ||||||||||||||||
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すきまばめ | 中間ばめ | しまりばめ | |||||||||||||||
h5 | H6 | JS6 | K6 | M6 | N6* | P6 | |||||||||||
h6 | F6 | G6 | H6 | JS6 | K6 | M6 | N6 | P6* | |||||||||
F7 | G7 | H7 | JS7 | K7 | M7 | N7 | P7* | R7 | S7 | T7 | U7 | X7 | |||||
h7 | E7 | F7 | H7 | ||||||||||||||
F8 | H8 | ||||||||||||||||
h8 | D8 | E8 | F8 | H8 | |||||||||||||
D9 | E9 | H9 | |||||||||||||||
h9 | D8 | E8 | H8 | ||||||||||||||
C9 | D9 | E9 | H9 | ||||||||||||||
B10 | C10 | D10 |
[注]*これらのはめあいは、寸法の区分によっては例外を生じる。