金属種類と用途

金属種類と用途について

金属材料は、広範な用途と特性により工業分野で広く利用されています。
このページでは鉄鋼、ステンレス、銅合金、アルミニウム合金材料の種類、その材料記号、用途、適用JIS(日本産業規格)について確認することができます。また、非鉄金属の製品形状を表すJIS記号や、アルミニウム及びアルミニウム合金の質別記号についても触れており、材料の特性とその加工方法など使用目的に応じて最適な材料を選ぶための情報を提供いたします。

一般鉄鋼材料

種類 材料記号 用途 適用 JIS 平鋼 角鋼 六角鋼 丸棒 鋼板 形鋼
一般構造用圧延鋼材 SS400 一般機械部品 加工性・溶接性が良好 JIS G
3101
ミガキ棒鋼(冷間引抜) SS400D 一般機械部品 精度・面粗度が良好で、そのまま又は僅かな切削量で使用できる。
機械構造用炭素鋼鋼材 S45C 一般機械部品 焼入れ可能。引張り強さ58kgf/mm2 JIS G
4051
S50C 焼入れ可能。引張り強さ66kgf/mm2
炭素工具鋼鋼材 SKS93 軸、ピン等 ドリルロッド材(丸棒)
SK4材を冷間引抜き後切削仕上げしたもの。
7級(-DG7)=h7
8級(-DG8)=h8
9級(-DG9)=h9がある。
JIS G
4401
SK4
SK5
合金工具鋼鋼材 SKS3 焼入れ部品 焼入れによる変形がSK材に比べて格段に少ない。 JIS G
4404
クロムモリブデン鋼鋼材 SCM435 強度を要する一般機械部品ねじ等 SCM435
引張り強さ70kgf/mm2
焼入れ・焼戻しにより引張り強さ95kgf/mm2以上硬さHB270以上表面焼入れでHRC50以上。
JIS G
4105
SCM415
SCM420
硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材 SUM21 一般機械部品(快削用鋼材) 被削性向上の為炭素鋼に硫黄を添加した快削鋼 JIS G
4804
SUM22L 硫黄の他に鉛も添加された快削鋼
SUM24L
高炭素クロム軸受鋼鋼材 SUJ2 転がり軸受等 ベアリング鋼 JIS G
4805
冷間圧延鋼鋼材 SPCC カバー、ケース等 常温に近い温度で圧延製造。
寸法精度が高く、肌が美しい。曲げ・絞り・切断の加工性良好。
溶接性も良好。
JIS G
3141
熱間圧延鋼鋼材 SPHC 一般機械構造用部品 一般的な使用板厚は、6mm以下。 JIS G
3131

ステンレス鋼材料

分類 材料記号 用途 適用 磁性 JIS 平鋼 角鋼 六角鋼 丸棒 鋼板 形鋼
オーステナイト系 SUS303 防錆の必要な機械部品 18-8系快削ステンレス鋼・磁性無。SUS304より切削性良。 無* JIS G
4303~
オーステナイト系 SUS304 防錆の必要な機械部品 一般耐食鋼・耐熱鋼とし最も汎用性の高い材料。 無*
オーステナイト系 SUS316 防錆の必要な機械部品 海水や各種媒体に304より優れた耐海水性がある。 無*
マルテンサイト系 SUS440C 防錆の必要な機械部品(耐食性はオーステナイト系に比べて劣る) 焼入れ可能。
マルテンサイト系 SUS410 防錆の必要な機械部品(耐食性はオーステナイト系に比べて劣る) 焼入れ可能。加工性良好。

* マルテンサイト系は磁性があります。オーステナイト系に加工を行うと磁性を帯びることがあります

銅合金材料

種類 材料記号 用途 適用 JIS 角鋼 六角鋼 丸棒 鋼板
黄銅板 C2801P 一般板金加工用ネームプレート、計器板 強度が高く展延性がある摺動部への使用。真鍮 JIS H 3100 ⚪︎
快削黄銅(押出棒) C3604BD 一般引物用ボルトビス、ナットその他 被削性に優れる。 JIS H 3250 ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎

アルミニウム合金材料

分類 材料記号 用途 適用 JIS 平鋼 角鋼 丸棒 鋼板 形鋼
Al-Cu系合金 A2011 一般用強力材 快削合金。加工性に優れるが耐食性が劣る。 JIS H
4000
⚪︎
Al-Cu系合金 A2017 一般用強力材 強度が高く、加工性良好
ジュラルミン
⚪︎ ⚪︎ ⚪︎
Al-Mg系合金 A5052 一般機械部品カバー、ケース等 中程度の強度を持った、最も代表的なアルミ合金。強度の割に疲労強度が高く、耐海水性が優れる。 ⚪︎ ⚪︎
Al-Mg系合金 A5056 一般機械部品 耐海水性に優れ、切削加工による表面仕上り良好。 ⚪︎
Al-Mg-Si系合金 A6061 一般機械部品 熱処理型の耐食合金。T6処理によりかなり高い耐力を得られる。 ⚪︎ ⚪︎
Al-Mg-Si系合金 A6063 一般機械部品構造用材 代表的な押出用アルミ合金6061より強度が低いが押出性に優れ、複雑な断面形状が可能。耐食性・表面処理も良好。 ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎
Al-Zn-Mg系合金 A7075 治具・金型 アルミ合金中で最高の強度をもつ合金の一つであるが耐食性は劣る。超々ジュラルミン ⚪︎
非鉄金属の製品形状を表すJIS記号
P 板、条、円板
PC 合わせ板
BE 押し出し棒
BD 引き抜き棒
W 引き抜き線
TE 押し出し継目なし管
TD 引き抜き継目なし管
TW 溶接管
TWA アーク溶接管
S 押し出し形材
BR リベット材
FD 型打ち鍛造品
FH 自由鍛造品
アルミニウム及びアルミニウム合金の質別記号
記号 定義 説明
F 製造のままのもの 特に調質の指定なく製造された状態を示す。押出のまま、鋳放しのままで調質をうけない材料がこれにあたる。
H112 展伸材においては積極的な加工硬化を加えずに、製造されたままの状態で機械的性質の保証されたものを示す。
O 焼きなましにより最も軟かい状態となったもの 焼なましにより完全に再結晶した状態を示す。熱処理合金の場合は、焼なまし温度より緩やかな冷却を行ない、焼入の効果を完全に防止することが必要である。
H H1n 冷間加工を行ない加工硬化したもの nは1~9の数字で示され、加工硬化の程度を示す。すなわち8は硬質材、4はOと硬質材の中間(1/2硬質)の加工硬化状態であることを示す。2、6はそれぞれOと1/2硬質、1/2硬質と硬質の中間の加工硬化状態であることを示す。
H2n 加工硬化させたものに適度に軟化熱処理したもの
H3n 冷間加工を行ないさらに安定化処理したもの
T T1 高温加工から冷却した後、自然時効させたもの 押出材のように熱間加工工程から急冷し、その後常温で時効硬化させる処理をいう。矯正などの冷間加工は強度に影響を与えない程度に施してもよい。6063のような熱間加工(押出)後の冷却で焼入効果が得られやすい合金に適用される。
T3 溶体化処理後、冷間加工し、更に自然時効させたもの この処理は板、棒、管などについて、さらに強度を向上させるため冷間加工する場合と矯正寸法精度をあげるため冷間加工を行ない加工の効果が認められる場合がある。冷間加工度が通常のT3より大きい場合を特にT361と表示する。
T351 溶体化処理後冷間加工を行い、残留応力を除去し、更に自然時効させたもの 溶体化処理後強さを増加させるため冷間加工を行い、1.5%以上3%以下の永久ひずみを与える引張加工によって残留応力を除去した後、さらに自然時効させたもの。
T4 溶体化処理後、自然時効させたもの 通常4日間程度の常温放置で時効を完了するが、7NO1の場合は長期にわたって進行するので、1ヶ月経過後の引張性質を参考値として規定している。特に需要家において規定の条件でT4処理したものをT42という。
T5 高温加工から急冷した後、人工時効硬化処理したもの 機械的性質の向上、寸法の安定化をはかるため、人工時効硬化処理を行なう。6063など高温加工(押出)後の冷却で焼入効果が得られやすい合金や鋳物に適用される。
T6 溶体化処理後、人工時効硬化処理したもの 熱処理合金の代表的熱処理で冷間加工を行なうことなくすぐれた強度が得られる。特に需要家において規定の条件でT6処理したものをT62と呼ぶ。
T61

展伸材:

温水焼入れによる溶体化処理後、人工時効硬化処理したもの

鋳 物:

焼入れ後、焼きもどし処理したもの

温水焼入れは焼入れ時のひずみ発生防止のために行なう。
通常のT6処理よりも高い強度を得るために人工時効硬化処理の条件を調整している。
T7 溶体化処理後、安定化処理したもの 強度をある程度犠牲にして、特別の性質を調整するために、最大強さを得る人工時効硬化処理条件を超えて過時効処理したもの。
T73 溶体化処理後、過時効処理したもの 応力腐食割れ性の改善のために、溶体化処理後に過時効処理を行なうもの。JISでは鍛造品の7075で規定されている。
T7352 溶体化処理後、残留応力を除去し、さらに過時効処理したもの 応力腐食割れ性を改善するために溶体化処理後1%から5%の永久変形が残る圧縮加工を行ない残留応力を除去してから過時効処理を行なう。7075の自由鍛造品に規定されている。
T8 溶体化処理後、冷間加工を行ってから人工時効硬化処理したもの 機械的性質の向上をはかるため、あるいは矯正や寸法精度の向上のために冷間加工を行ない、冷間加工の効果が認められる場合にいう。冷間加工時の断面減少率が3%および6%の場合を、それぞれT83、T86と示す。いずれも強度向上のために行なう。
T9 溶体化処理後、人工時効硬化処理してから冷間加工したもの 冷間加工は強さを増加させるために行なう。

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